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鉄道の歴史


1.鉄道と環境の問題
3.鉄道と環境の問題
4.鉄道と環境の問題




 鉄道と自動車はエネルギー効率で4〜5倍の差がある。さらに鉄道の場合は惰行(動力を切って惰力でレール上を転がる)が有効に利用でさるため、総合的なエネルギー効率はもっと高くなり、総合効率では鉄道の効率は自動車の10倍ほどになる
  1989年7月におこなわれた「アルシュ・サミット」(先進国首脳会議)では、国際的な環境問題が話題になった。なかでも地球温暖化の問題が深刻である。燃料を燃やしたとさに発生するCO2(二酸化炭素)の排出は地球の温暖化を招き、最悪の場合には極地の氷が解け出すため海面上昇で陸地が水没したり、そこまで行かずとも気象の大異変、マラリアの流行などが生じると予測される。いつ、どれくらいの規模で、どこにそれが起きるかについては、まだいろいろな説があって確定していない。しかし、もっとも楽観的な説でさえも、ひとたび異変が起きたならばそれをもとに戻すことは不可能であって、いまから何らかの対策を講じなければ取りかえしのつかないことになるという結論では一致している。温暖化と地球規模の環境汚染の問題は、これまでの災害のなかで、人類にとってはじめての「森へ逃げても解決することのできない問題」だといわれる。じつのところ、エネルギー業界や技術者の間でも、そのような影響はいささかSF的な話であって、起こるとしてもまだ先のことと受け取っていた面もあった。しかしもはや悠長なことは言っておられず、各企業でも続々と「地球環境対策プロジェクト」といった活動をはじめている。日本では交通運輸の分野で全体の2割から3割のCO2を排出しているが、排出源の大部分は自動車である。このような情勢なのに、ことに乗用車の部門では「大型車・高級車ブーム」などによって、ますますエネルギー浪費とCO2そのほかの排出ガスが増加している。ちなみに乗用車の「燃費」の平均値をとっても、1982年までは少なくとも毎年改善の方向にあったのに、その後は逆に悪化の一方となった。エネルギー情勢が緊迫したり地球温暖化が深刻化すれば、どのみち乗用車などに乗ってはいられないし、最後の燃料をたよりに乗用車に乗って「森へ逃げて」も解決できないのである。「自動車の責任は2割だけであるから、ほかの分野のほうを問題にすべきだ」という反論も出ると思うが、実際には自動車とほかの分野のシステムのちがいも合わせて考えなくてはならない。
  発電・工業・生活などの分野では、省エネルギーを強化したり、CO2を削減する方式に切りかえる用意ができている。発電や産業からのCO2は、深海に溶け込ませて地表面に出てこないように処理したり、化学的に変成してふたたび燃料として回収するなどの方法も考えられている。これにたいして自動車交通の分野だけが硬直化したまま、改善の動きがみられない。個別に走り回る自動車から発生するCO2は回収することもできない。たとえCO2を出さない自動車がいま発売されたとしても、すでに世の中に出回っている莫大な数の在来型自動車を、メーカーあるいはユーザーが費用を自発的に負担して交換するであろうか。駐車違反や車庫証明の不正取得すらメーカーやユーザーの反発をおもんばかって容易に是正できない現状をみれば、自発的な改良は期待しがたい。耐用年数の経過によって自然に置きかえられて効果があらわれるまでには2、30年かかるであろうが、それでは間にあわないかもしれない。さらに、いまの自動車交通の分野では「省エネルギー」「低CO2化」そのものが真剣に考えられていないのではないか思われるふしがある。電機自動車が環境的に有利な側面をもち、エネルギー的にも相当なところへ到達可能であるにもかかわらず普及できない一原因は、現在の内燃機関自動車製造と石油利用のシステムが、あまりに強固なシステムとして存在するからである。自動車交通に関する発想を転換しないと、他の分野でせっかく「省エネルギー徹底化」「無CO2化」を達成しても、自動車だけがエネルギー浪費とCO2排出をつづけて、他の努力を無駄にすることになりかねない。

他の分野も含めてエネルギー面からの温暖化対策をまとめると、

省エネルギーとエネルギー利用効率の向上
・熱源の多面的利用、地域冷暖房、廃熱回収など
・高効率発電技術
・高効率交通機関の開発
・燃料転換
・軽質燃料への転換(天然ガスなど)
・代替エネルギー・太陽熱、水力、風力、地熱、バイオマス(農林資源)、潮汐、波力など
・原子力の利用
・固定化、再利用技術

といった提案があるが、鉄道はいずれにも対応が可能である。しかし自動車は、現在のガソリンやディーゼルエンジンによるシステムをつづけるかぎりは、いずれの項目にも対応が困難と思われる。また、CO2を回収して循環させるエネルギー体系も提案されているが、これに対応できる交通機関はやはり鉄道である。また温暖化のほかに、自動車の害としてすでに確実視されているものは植物への影響である。以前は植物被害(森林および農作物)のおもな原因は「酸性雨」(主として発電から排出される硫黄の酸化物が、雨に溶け込んで地表に降ること)であると見られていた。しかし、ドイツのアウトバーン周辺の森林被害が激しいなどの観察から、被害の原因は、発電を起源とする酸性雨よりも、自動車から排出される炭化水素を原因とする「オキシダント」(いわゆる光化学スモッグの原因)によるものではないかと考える研究者もある。
乱開発による森林の消失が問題となっているおりから、日本でいま以上に自動車交通の拡大や高級化・大型化などがすすめば、いずれ国際的に非難されるであろう。

「日本経済評論社 鉄道は地球を救う」より


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